歌の勉強をしているとこんな言葉に出くわします。
「抜ける声を出しましょう」
「声が詰まってます」
「鼻に響かせましょう」
これってどういうこと?って思った事ありませんか?
私も生徒さんによく質問されます。
「力を抜くってことですか?」
「弱くするってことですか?」
「抜くって意味が分かりません」
「抜いてみたら力が抜けちゃって歌えないんですけど」
と、まあ、こんな感じで頭の中には「はてな (?)」がたくさん並びます。
この抜ける声 の「抜く」って
出来てみるとしっくりくる表現なのですが、
練習中の方には非常に難解な表現ですよね。
ではこの「抜ける」ってどういうことでしょう?
ズバリ!
抜けている声 とは → 共鳴している声 です。
反対に、抜けていない声・共鳴していない声を「詰まっている声」とも言います。
声は共鳴腔(きょうめいくう)で共鳴します(響きます)。
ウィキペディアによると、「共鳴腔とは体の中で声が反響する空洞部分のこと」とあります。
下の図を見てください。共鳴腔は主に水色で塗られた部分「鼻腔 (びくう)」「口腔 (こうくう)」「咽頭腔 (いんとうくう)」です。
ここに響かせる為に 口の奥の方を引き上げて口腔を広くしたり舌を下げたり・・と、いろいろな事をするわけです。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=354x10000:format=png/path/sd2d434d5eb12312b/image/i517539986bef29c7/version/1611763368/image.png)
なるほど!
でも私の声って果たしてこの共鳴腔に響いているのかしら???
早速、簡単な実験してみましょう!
(今回は特に、絵の中のピンクで囲んでいるあたりが共鳴できているかに焦点を当てます)
ロングトーンで「ミ―――」と言いながら親指と人差し指で 鼻を「摘まむ」「離す」を交互に続けてください。
自分の声にしっかり耳を傾けてくださいね。どんな音色がしますか?
次に、同じやり方で「ピ―――」と言ってみてください。
どんな音色がしますか?
「ミ―――」の方は鼻を摘まんだり離したりする度に音色が変わったと思います。
「ピ―――」の時も同じように音色が変われば、おめでとうございます! 共鳴していると思います。
「ピ―――」の時に全く音色が変わらなかった方、残念ながら共鳴していないようです。
なぜこのように違いが出てくるのでしょう?
共鳴している声は「鼻に抜けている」「鼻に響きがくる」と表現したりもします。
なので、「ピ―――」で音色が変わらなかった方は 鼻に抜けていない・ 鼻に響きが来ていない という状態なんですね。
「共鳴」には鼻が関係しているのです。
一般的に “まみむめも” の 「ま行」は鼻に響く音です。
鼻に響いているこの「ま行」を発声している時は喉の奥の方が空いているのです。
鼻と口は空洞で繋がっているので、空気の行き来は自由に出来ますね。
だから空気が鼻の方にも抜ける。従って鼻を摘まむと影響を受けて音色が変わります。
反対に鼻に響いていない時は口の奥~の方が閉じて空気が鼻に抜けるのを妨げています。
鼻と口を繋ぐ空洞が途中で遮られているんですね。
そもそも鼻に空気が抜けないのだから(鼻と口が遮られているのだから)摘まもうが何しようが音色は変わりません。
「ミ―――」と「ピ―――」が同じ音色にならなかった方は
「ミ―――」と声を伸ばしながら言い直しせずに(息継ぎせずに)そのままの調子で「ピ―――」に変える練習をしてみてください。
「ミ―――」と同じ音色で「ピ―――」と言えるように何度も練習しましょう!
誰もが共鳴させる事のできる「ま行」を見本にして
他の音(文字)もしっかり鼻に響くように練習してみてくださいね。
共鳴している声は自然と音を増幅させて大きな声や膨らみのある声を出すことが出来ますが、
響かない声は大きな声を出そうとすると力任せになります。。
そうなると声帯に炎症を起こしてしまったりすぐに声が嗄れてしまったりと、良くないですよね。
また、「鼻の通り」は歌のみならず声を出す職業の人には本当に大切な事です。
もしも慢性の鼻炎などでいつも鼻が詰まっている、苦しい・・という方は耳鼻科に相談するなど対処方法を考えてみると良いと思います。
鼻に抜ける声・共鳴する声で楽しく歌ってくださいね。
それからもう1つ。
「鼻に抜ける声・鼻に響く声」と「鼻声」は違うものです。
「鼻声」は主に風邪をひいている時の声ですね。
ご注意くださいね(^^♪
(補足)
裏声(頭声)で歌曲を歌うなど、声の出し方や場面によって鼻を摘まむ同じ動作をしても音色が変わらない場合もあります。
あくまでも、声が詰まっていたり伸びなかったり咳き込むような時、目安として使ってください。